この寒さは、シュールとアビが、裏山の護り主であった精霊を、勝手に持ち去った故であると、いつしか噂されるようになっていた。
人間はいつも、何か良くない事が起こった時、責任転嫁する存在を探すものだ。アビはその格好の材料にされたのだと、フレアは思っている。あんなに精霊など信じないと言っていたものが、自分達に都合のいい様に、ころりと考えを変える。いつも何かのせいで自分達が被害を受けていると思い込む。誰かがいつも悪者にならなくてはいけないのだ。
そして悪者にされるのは、その場にいないもの――死んだ者や旅立ったもの、もしくは抵抗出来ない弱いもの――である。
小さな村でそれは当たり前だった。
ブルッと身体を震わせて、フレアは襟元をきつくあわせた。そしてゆっくりと雪を踏み締めて、店に戻っていった。