「あたしとフーチはね、幼馴染みってやつだったのさ。フーチはあたしと結婚したくてこの店を始める事にしたんだよ。信じられるかい? あの飲んだくれのフーチがさ、あの頃はあたしに夢中だったのさ」
ここまで言うとフレアはふっつりと黙ってしまい、閉じたままの目にうっすらと涙を光らせた。若い頃の大切な思い出を一つ一つ噛み締めるように反芻しているのだ。
あの頃は希望に満ちていた。何もかもが輝いていて、憂いは何一つなかった。なぜあのまま時が止まってしまわなかったのだろう。なぜ人の心は変わるのだろう。フーチはいつからあんなに酒を飲むようになったんだろう。いつから……