主を封印した過去の英雄談をずっと信じてきた村びとにとって、英雄がいなかったなど、すんなりと受け入れられるはずがない。
その上、精霊などという存在が本当にいるのかどうか、それも信じがたかった。
銀の騎士の伝説は、子供の頃から聞かされている。
遥かいにしへの時、
渾沌と魔法が時を支配せし頃、
白の世界、魔に侵されん時、
伝説の銀の騎士あらわれん。
かのひと妖しの環、天にかざし、
麗しき乙女の姿かりし、
いにしへの神降り立ちん。
かくして白の世界すくわれん……
この詩はあまりにも有名だった。
だが、それはあくまでも伝説であり、現実とはなんら関係のない出来事だ。