ありったけの長上衣、毛布、膝掛けなどが出尽くしてしまい、人々は何も手にしないまましぶしぶ帰って行ったのだった。
ふうっと溜め息をつきながら、フレアは大柄な身体を重たげに揺らし、よっこらしょと椅子に腰掛けた。腰痛は、もう何年も前からフレアを苦しめていたが、今日の寒さは更に最悪だった。
ショールの襟元をきっちりと合わせ、膝掛けを腰に捲く。吐く息は真っ白だ。
はあっと手に息を吹き掛け、暖かいお茶を入れる為に立ち上がろうとしたその時、
ガチャーン!
大きな音に振り返ると、石が投げ込まれて店の窓ガラスが店内に飛び散っていた。
急いで外に飛び出すと、悪ガキのチャンが逃げて行くところだった。
「お待ち!」