目を閉じると、あの看板をフーチと二人でかけた日の事が思い出された。
「あの頃は幸せだった。若かったし、フーチもあんなじゃなかった。いつまでも幸せが続くもんだと思い込んでいたね」
うっとりとここまで言うと目を開けて、フレアは棚の下当たりで縮こまっている猫を覗き込んだ。
「家にいれてやった代わりにあたしの昔話をきいとくれよ。
今となっては誰も聞いちゃくれない昔話をさ」
猫はそっぽを向いたままだったが、フレアは気にせず再び目を閉じて、自分の世界に入っていった。
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