「ありがとう。サイナはちっとも変わらない。ホッとするよ。」
「アビは変わったわ。大人になったみたい。」
「まさか、半年でそんなに変わるもんか。」
アビは笑った。心から笑ったのは久し振りという気がする。
「もう行かなくちゃ。」
別れがたい思いがした。サイナはいつもアビの心を和ませる。帰って来て良かった。アビはサイナの手を強く握った。そして最後に思いを断ち切るようににっこり笑って、走り出した。
「あっ。」
サイナは何か言おうとしたが、あっという間にアビの姿は見えなくなった。
「もう、いつも勝手なんだから。」
サイナはアビの消えた闇を、しばらくの間黙って見つめていたが、やがて気を取り直して家の中へ走り込んだ。
「おばあちゃん、おなかすいた。」
誰もいなくなった前庭に、無邪気な声がちいさく響いた。