ププタン村の入り口が見える小高い丘の上まで来ると、アビは自然に馬を止めた。
あれからまだ半年しかたっていないというのに、故郷はやはり懐かしかった。
嘘つきと後ろ指差されて追われるように出て来たふるさと。黙って出て来た事を、おばさんは怒っているだろうか。
「ここがアビとシュールの生まれた村ね。」
馬をおりたチチが、始めて来た最東の小さな村を珍しそうに眺めている。
「どうしたの?アビ。」
下を向いて佇むアビを覗き込んで、チチは目をまるくした。
アビの顔がつらそうだ。故郷に何か嫌な思い出でもあるのだろうか。
シュールは黙ってアビの肩に手をおいた。
村の向こうに海が見える。夕暮れ時の薄紫に染まった空が、海との境目を曖昧にしている。
「ここから日の出を見たいわね。」
チチはうっとりと目を細めた。
「さあ、ぐずぐずしてはいられない。どうするアビ?」