アビはもう一度ブナの実を投げた。
コツン。
サイナは急いで窓を開けて、身体を乗り出した。
「サイナ。僕だよ。」
アビが小声で呼び掛ける。
「ア、アビ!!!」
「しっ。小さな声で。」
アビは素頓狂な声を出したサイナに慌てて言った。
「いつ帰って来たの!?どうしてそんなところから!?」
サイナは本当に驚いているようだ。
「前に預けた光らない石を取りに来たんだ。外に出て来られる?内緒で。」
「うん。今行くわ。」
サイナが光らない石の入った革袋を持って部屋を出るのを見届けてから、アビは木から降りた。そして、木の影で、誰にも見つからないよう祈りながら、サイナが出て来るのをじっと待った。
暖かそうな家の扉から、サイナはすぐに出て来た。