シュールがポンと肩をたたきアビを促した。
「やっぱりこっそり取って来るよ。まだ、おばさんに会いたくないんだ。ここで待っててくれる?すぐに戻って来るから。」
アビは気弱そうにシュールとチチの顔を見比べた。
チチはププタンに入れず少しがっかりした様子だったが、シュールは明るく笑ってくれた。
「よし、待ってるから行って来い。」
バシッとアビの右腕をたたく。アビは力強く頷いて村に向かって走り出した。この時間は夕食時だ。家の外に出ている者は少ないだろう。誰にも会わずに村長の家までたどり着けるだろうか。アビは全速力で一気に丘を走りおりた。
「はぁ、はぁ。」
両膝に手を当てて肩で息をしながら、村の入り口で一度立ち止まると、家々には明かりがともり始めていた。